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HOME > 蕎麦屋時間を愉しむ > 「日曜庵」 東京都葛飾区

玄蕎麦を自家貯蔵、新蕎麦を出さない勇気

 この店の大きな特徴は毎週金土日の3日と祝日のみの営業というところ。西村さんはそれ以外の平日も蕎麦を自家製粉するために、玄蕎麦の殻を剥いて、前日には石臼で製粉している。
「一番力を入れているのが原料である蕎麦の保管。次に挽き方。いろんな蕎麦屋さん行きましたが、自家貯蔵、自家製粉の店に行くと蕎麦の美味しさが違う。それで、自宅の庭を潰して玄蕎麦3トンが入る冷蔵庫を置くことに・・・」
 玄蕎麦は黒姫、茨城、福井、福島などの農家から直接買い入れ、無酸素状態にして5℃以下で保管する。この状態で保存すると「蕎麦が追熟して、新蕎麦以上に味がよくなる」。したがって、蕎麦は2、3年寝かせてから使う。この日は2008年産の黒姫をベースに3種をブレンドしたものだった。
「新蕎麦を使わないのは蕎麦屋としては勇気がいる。でも、自家貯蔵、自家製粉していれば、味の違いがわかります」

「粗挽きが美味しい」の確信

 蕎麦はせいろ、粗挽き、田舎の3種あるが、店主のお勧めに従って粗挽きせいろを頼んだ。粗挽きで14メッシュ。 せいろが30メッシュ。玄蕎麦から挽き込んだ田舎も30メッシュだ。
「粗挽きは外側のたんぱく質に味があるんです。 微粉に挽くと粉焼けして風味が飛んでしまうが、粗く挽くと粒の中に風味を閉じ込めることができる。大きい粒と小さい粒の間に気泡を入れ、空気の力を借りてつなげています」 触れば壊れてしまうほど脆い蕎麦のため、1人前ずつアルミホイルに入れて、茹でるときはそっと釜に入れる。細心の注意を払って十割の粗挽きを見事につなげている。
 粗挽きそばはカラー選別機で丸抜きのうち最良の10%をチョイスして打ったもの。 カラー選別機は色で蕎麦を選別できる機械で、きれいな緑色の蕎麦だけを選別できる。

日本酒とあて

鴨焼き
-塩バルサミコ酢で-

焼き味噌と人参
 

きれいな緑色した粗挽きの十割

 運ばれてきた粗挽き蕎麦はまず見た目が美しい。 きれいな薄緑色をして、緑色の甘皮の破片や赤茶色などの粒々が星のように散らばり、全体を透明感が覆っている。 少量の水蕎麦が付いてくるので、最初に清冽な味わいの水蕎麦をいただく。 次に蕎麦を手繰って、そばつゆをつけずに味わう。 ほのかな香りが鼻を抜けて、噛むと甘みが生まれる。 何よりも蕎麦のコシというか、粘り気が強い。 もぐもぐと噛み締めて旨みを味わう蕎麦である。 そばつゆは粗挽きの蕎麦に負けない、辛くて甘みもあるタイプ。 生返しを3ヶ月寝かせるという。
「何でも“際(きわ)”が美味しい。 魚も身と皮の間に旨い部分があります。 蕎麦も甘皮と身の間の際が美味しいので、その部分を大事にしたい」



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