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HOME > 蕎麦屋時間を愉しむ > 「雙柿庵」 東京都日の出町

手挽きのお蕎麦 

酒と料理と蕎麦を愉しみたいときに行きたくなる蕎麦屋

蕎麦屋の愉しみは蕎麦だけにとどまらない。 粋に設えた空間を愛で、酒肴に箸を延ばし蕎麦前を嗜む。 気心が知れた友との会話。 ほろ酔いで手繰る締めの蕎麦まで、非日常の空間でゆったりとした時間を過ごしたい。 そんな思いを抱いてJR武蔵五日市駅に降り立った。

江戸時代、屋台から始まった蕎麦屋は本来、ゆっくりと時間を過ごすところではなかった。 それが、いつしか 「蕎麦屋の二階」 という言葉が生まれたように、男女が逢引するような艶っぽい空間となり、じっくり話したいとき、ゆっくりと飲みたいときはなじみの蕎麦屋の二階の座敷に上がって飲むという蕎麦屋文化が生まれた。
そして今。 逢引はともかくとして、蕎麦屋の二階のような使い方ができる蕎麦屋が増えてきた。 空間を粋に設え、蕎麦屋の定番といわれる簡単なあてではなく、凝った料理を出し、日本酒も選りすぐりの銘柄を揃える。 そんな店でゆっくりと酒と肴と蕎麦を愉しみたいときがある。

真先に思い浮かんだのが日の出町の 「雙柿庵」 だった。 手挽きの蕎麦だけでなく、他の要素もそれぞれ素晴らしく、いつ行っても満ち足りたひと時を過ごすことができる。とっておきの蕎麦屋である。

古民家を改装した、細竹と草に埋もれた庵で

久しぶりに訪れると店は細竹に埋もれているかのようだった。 以前は木々の向こうに木造の古民家が見え隠れしていたものだが。 トンネルのように伸びた細竹の小道を通って玄関に辿り着いた。 白い麻の暖簾。 引き戸を開けると以前と変わらぬ佇まいの店があった。
いや、一つだけ大きく変わったことがある。 若き女将さんがにこやかに出迎えてくれたのだ。

以前は店主の澁田剛さんが週末以外は厨房も接客も一人でこなしていた。 初めて訪問したとき誰も出てこないので一人ぽつねんと待っていた心細さを思い出す。 細やかな心遣いを見せる女将さんの案内で庭に面した、大きなテーブルの前に座る。 傾いだ松の木、店名の由来となった柿の木、自然のまま山野草が生い茂る庭。 草庵めいた雰囲気がますます強くなっていた。 テーブルとガラス越しに見る、ここからの眺めは時折思い出すくらいに気に入っている。


細竹の小道

白い麻のれんの入り口

店主の澁田さん夫妻

ゆっくりとした時間が流れる店内

 
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