たなか
3.御年85歳。今なお現役!
■弟子の店に思うこと
明月庵田中屋」を人に譲り渡すことに対して、寂しいという声は多かったですね。 特に、弟子は卒業した学校がなくなるようなものですから。
うちの店を巣立った人は、練馬時代を含めると100人以上でしょうね。 その中で、2番目の弟子と言えるのが、「竹やぶ」の阿部(孝雄)さん。 彼はうちで手打ちを覚えたんです。 「僕は君のおじいちゃんにいろいろ教えてもらったから、習いたいことがあればいつでも来なさいよ」と孫に声をかけてくださって。 なかなか言えることじゃありませんよ。
「玄蕎麦 野中」(東京・中村橋)「蕎麦の膳 芝甲」(埼玉・杉戸町) 、「玄蕎麦 もち月」(東京・成瀬)など、うちを出て頑張っている人たちはたくさんいます。 私は来る者拒まずで、短期で習いに来る人も多く、「旦那さんは厳しいけれど、それが有り難かった」と言ってくれますね。
残念なことに閉店したところもありますが、そういう人たちは、大抵が修業不足。短期で来たある人も、蕎麦打ちの学校で数ヶ月間、習っただけで、店を開くと言うから、「蕎麦打ちの先生はいいって言ったかもしれないけれど、今、始めたら、すぐに潰れちゃうよ」って止めたんですよ。 仕事をさせても何もできないんですから。 景気のいい時代ならともかく、この厳しい世の中で店を続けるのは簡単じゃない。 結局、何年もたたないうちに、店を閉じてしまいました。 蕎麦屋の仕事は甘くないーー。 私自身、そう痛感しました。
■孫の成長が今の楽しみ
ある方に、80歳を過ぎて第一線にいるのは、「すきやばし次郎」のご主人と「野田岩」の五代目、それに私ぐらいだと言われましてね。 今年85歳。 でも、ありがたいことに、体に悪いところはどこもありません。 毎日、朝は5時20分に目が覚めて、店で仕事をして夜は8時前後には布団に入る。 健康法はマッサージに行くことぐらい。 私はお酒もタバコもたしなみませんから、それもいいのでしょう。
趣味は旅行とゴルフですね。 年二回、一ヶ月ほどハワイに行って、のんびりとゴルフをするんです。 楽しいですよ。 向こうに行く時は大抵一人。 向こうで友達と合流します。 私がいないほうが、女房も自分のペースで生活できていいようですね。 孫の智史には、「いつまでもじいじをあてにするなよ」 とよく言っています。 でも、私がいない時でもちゃんとやっているのだから、だいぶ成長したのでしょう。 蕎麦やうどんは智史が打っていますし、最近はお客さんに送るハガキなども作っています。 周りの人に助けてもらいながらでもいい、孫が一人前になることが、私の楽しみの一つなんです。
<お店情報>
店名 | : | たなか |
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住所 | : | 東京都西東京市ひばりが丘1-15-9 |
TEL | : | 042-424-1882 |
営業時間 | : | 11:00~15:00(LO14:30) |
定休日 | : | 火曜・第三水曜日(但し祝祭日は営業) |
アクセス | : | 西武池袋線「ひばりヶ丘」駅下車 徒歩7分 |
メニュー | : | 御前せいろ 500円 かけ 500円 そばがき 1,000円 細切りうどん 500円 |