
【端午の節句】蕎麦で祝う-端午そば-
5月5日は五節句の一、【端午の節句】。「菖蒲〔しょうぶ〕の節句」とも言われます。
【端午の節句】
「端午の節句」には強い香気で毒気・邪気を祓うために菖蒲や蓬を屋根に葺いたり、薬玉をつくって軒につるしたりしました。また菖蒲湯に入ることで無病息災を願いました。
菖蒲が尚武に通ずるとして、5月5日が男子の節句に定着するのは、江戸時代に入ってからのようです。
一般的な端午の節句の食べものとして粽(ちまき)と柏餅があげられます。
三月三日の【雛そば】ほどに広まってはいませんが、蕎麦の世界にも【端午そば】といって五月五日の端午の節句にそばを食べる慣習があります。
【端午そば】
端午そばの最も古い記録としては、元禄八年(1695)に日光東照宮に端午の祝儀としてそば粉が献上されたとあり、恒例の行事となっていることから、献上のそば粉でそばを打ったものと思われます。
『御番所日記』元禄八年(1695)五月四日の条に「一御門主様江端午之御祝儀そばこ七升献上 惣社家中」とあります。

【菖蒲切り】
麺類の製法を記した『小堀屋秘伝書』(1803年)に季節の品書きとして「菖蒲麺」の記述があります。これは「五月菖蒲(あやめ)わり粉(小麦粉)壱升に、せうぶ細かにきり入れもむべし」と、菖蒲麺を挙げています。これは菖蒲の葉を刻むか、根をおろして小麦粉に加えたもので、そば粉を使えば「菖蒲切り」となります。邪気を祓う端午の節句にふさわしい蕎麦ともいえます。
参考文献:「蕎麦の事典」(新島繁著/柴田書店)